妖魔遊戯

 辺り一面紫に包まれた空間。天界の門と呼ばれる、カオスゲートの一角。ヨヅキが到着すると、そこにはすでにユナが待ち構えていた。

「あー、やっときたか。」
「ずいぶん待っていたような言い草ね。」

 会って早々、二人は軽く対話を始める。

「ドランクは見物に来ていないの?」
「あー、別件だ。」
「ってことはあなたがメインって訳ね。」
「いや、そーでもないみたいだ、今回は。」
「…?」

 ユナの言葉に、ヨヅキは疑問が浮かんだ。

「よくわからないけど、聞いても教えてくれないんでしょ?」
「実は私もよくわかっていないから、予測でしかないんだ。」
「招待しておいて主催がこれじゃ話になんないわ。」

 呆れたヨヅキに対し、ユナはいつでも戦闘に入れる準備を終えていた。

「まーそんなことは置いといて、天使が来る前に始めようじゃないか。」
「なんか戦意喪失したけど、いいわ。暇つぶしに遊んであげる。」

 一瞬にして二人の距離が縮まり、激しく閃光を放つ。

「乱鬼―ランキ―」

 交錯する攻撃の合間に、ユナは複数の次元から鬼の手を召喚する。

「月風―ツキカゼ―」

 対するヨヅキも攻撃の合間を見計らい、刀で竜巻のような風を起こし、その旋風から月のような斬風圧を飛ばす。
 両者の放った妖気と陰力が正面からぶつかり合い、大爆発を起こし二人を巻き込む。二人のいた場所に爆雲がかかり、外からの閲覧を阻止した。その中で尚、二人の攻撃のやり取りが行われ、激しい打音を響かせる。その音が消えると同時に、二人は距離を取った。

「また少し成長したようだな。」

 弱者を見る目で、ユナが言う。

「あんたは相変わらずね。いい加減本気を出しなさいよ。」

 対するヨヅキも、負けじと強く言い返した。

「そー言うのは力も乳も大きくなってから言うもんだ。」
「あらそう、乳がでかいだけのバカに私のステータスがわかるのかしら。」

 お互い引かず、尚も言葉による攻撃が続く。

「貧乳風情が何言ったところで巨乳に勝ることなんてありえないな。」
「でかけりゃいいってもんでもないでしょ。将来垂れるのがおちね。」
「そもそもその板のような胸元は乳と呼べるのか?」
「バランスの取れてない脂肪の塊に言われたくないわね。」

 二人は引きつった笑顔のまま言葉の猛襲を繰り返し続けた。



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 バカみたいな言葉の競り合いを続ける二人を、少し離れええたところで、二人の妖魔が観戦をしていた。

「何やってんだかあいつらは。」

 冷めた面持ちで夢魔はため息をついた。対して、その隣で静かに紅茶を啜るメーディス・ラ・フランは、意外な感想を述べる。

「お二人とも、恋の話に花が咲いたのね。」
「いや、どう聞いても乳喧嘩だろ。」

 すかさず夢魔が突っ込みを入れる。しかし、妄想モードに入ったメーディスは止まらない。

「意中の男性を想う気持ちをぶつけ合い、お互いを励ましあうなんて…。すばらしい友情だわ。」

 ネコのような耳をピクピクと動かし、聞き耳を立てながら、メーディスは感想を述べて行く。

「その耳は飾りか?」

 夢魔の突っ込みはことごとく無視される。

「まるで、紅茶と青汁のように相性がいいようね。」

 ユナよりも一回りほど大きな胸を揺らしながら、体をくねくねさせる。

「すでに相性の問題じゃないだろう。まったく。」

 夢魔はそう一言つぶやき、メーディスの手を引いてユナたちの元へと飛行を始めた。



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 口論を続けるユナとヨヅキの元へ、夢魔はメーディスの手を引いて到着する。

「いつまで口喧嘩するつもりだ?」

 到着と同時くらいに、夢魔は呆れた声でユナに詰め寄った。

「あー、忘れてた。暴れてなきゃいけないんだったな。」
「暴れてなきゃいけないってどういう意味よ?」

 ユナの発言に、ヨヅキが疑問を投げかける。その問いに対し、メーディスが割って入って説明した。

「主人様からそうしろと言われておりますので、暴れなくてはいけないのです。」
「何よその言いつけ…。」

 ヨヅキは、改めて今回のこの三人の行動に呆れる。前々から呆れてはいたが、ここまで主人に忠実に、騒げと言われれば騒ぎ、踊れといえば踊るといったような行為をするとは思っていなかった。そして、その中の一人であるユナに勝てないことが(胸は別件)悔しかった。
 いつの間にやら口論は停戦し、四人が今回の件を話し合っている。その光景を遙か彼方から発見し、新たな人物が姿を現した―――。


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