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「姉さん…。」 男達の中心で、血を流して倒れる姉を発見する。尚も血溜まりが広がる中、その変わり果てた姉を囲い目の前の男達が傍観していた。 「ほう、さすがボスが目を付けるだけのことはあるな。」 それがどういう意味なのか、その言葉が何を示しているのかマオには分からなかった。 「ヒヒッ、後の始末は弟君に任せて、俺達は退散しましょうかね。」 意味が分からない。目下に倒れた、血まみれの姉を見下ろして出る言葉がそのような言葉であっていいはずが無い。 「このバイト料で、パーッとカラオケでも行って気分でも変えるか。」 理解不能。そして、今までに無い怒りと悲しみが沸々と湧き上る。 「よくも…、よくも姉さんを!!」 言い切ると同時に、マオは地を蹴り、こぶしを握り締めていた。 「そんな遅いパンチが、当たるはずねぇだろ!!」 「ぐはっ!」 殴りにかかったものの、あっけなく返り討ちにあう。しかし、マオは立ち上がりもう一度こぶしを立てた。 「何度やっても同じだよ。」 「―――くっ!!」 またもや跳ね飛ばされ、体の骨が軋む。そして、埋めることのできない力の差を痛感した。 「こんなことが…あってたまるか!!」 仰向けのまま、マオは咆哮する。 「何でだよ!何で姉さんが死ななくちゃいけないんだ!!」 額から流れる血と涙が混じり、血の涙を流す。怒りと悲しみから体を小刻みに震わし、マオは怒りの矛先を問うかのように叫び続けた。 「なんで…、何でだよ!なんで姉さんを殺したやつにボクが勝てないんだ!!そんなこと、あってたまるか―――っ!!」 その迫力が、男達の動きを止めていた。そして、それがマオを変える、否、覚醒へと導く布石となる。 「私が…あなたの代わりに…。」 その瞬間だった。 「なっ!なんだ!?」 男達がざわめく。 「なんなんだよこの黒い霧は!?」 それもそのはず。男達はマオの上空から発せられた黒い霧に覆われ、視界の全てを奪われていたのだ。そして、その黒い霧に浮かぶ、一転の赤い光。その光から、言葉をかけられる。 「あなた達もあたしと同じ、殺戮が好きみたいね。」 その光に包まれていたのは幼い少女だった。 「人を殺せるほど強いなら、あたしの太陽にも耐えられるよね?」 黒い羽を広げ、真上に掲げた右手に真っ赤な太陽のような球体を生み出し、男達の前に立ちふさがる姿は、まさに悪魔そのものであった。 「そうじゃなきゃ、おもしろくないじゃない。」 言い切ると同時に、男達に炎の弾が落とされる。 「―――っ!!」 その炎は、じわじわと皮膚、肉、臓器、骨を焼き、男達に死の苦痛と恐怖を与える。聞き取ることのできない悲鳴をあげながら、男達はゆっくりと絶命していった―――。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 「少年よ、君が望むなら君の姉を蘇らせよう。」 残り火がかすかに燃える中、冷たくなった姉を抱きしめるマオ。それを見守る少女の後ろから、年老いた科学者のような男が声をかけてきた。 「私の息子も無念な死を遂げた。君のお姉さん同様、死ぬ必要などなかった。」 希望を失っていたマオの瞳が、徐々に光を宿していく。 「本当に…、姉さんは生き返るの?」 マオの言葉は危うさが見える、魂の抜けたように小さいものだった。 「もちろんじゃ。こんな悲しい死を神が与えようとも、儂が残酷な神に変わり君のお姉さんを救ってあげよう。」 その言葉に、マオは今までの無気力感から一転し、希望を見出すことができるくらいまで回復する。 「だが、儂の力だけではどうにもならん。君の協力が必要なんじゃ。」 「姉さんが生き返るためなら、ボクあなたに協力します!」 マオは老人に差し伸べられた手を掴み、立ち上がる。 「儂の名はラウ。この残酷な神の意志を滅ぼし、新たな善良な世界を作り出すのが使命と思っておる。」 ラウと名乗った老人は、マオの瞳を見つめ言葉を続ける。 「老い先短い儂に代わり、世界を変えてくれたまえ。君の若さと残酷な神への怒りがあれば成し得よう。」 マオはその言葉に同意するように頷く。そして、後方にいた黒翼の少女も協力の意志を示した。 |
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